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東京都と古伊万里の深い関係 ― さらなる視点から

5. 江戸の生活文化と古伊万里

江戸時代の江戸（今の東京）は、人口100万人を超える世界有数の大都市。町人文化が花開き、浮世絵・歌舞伎・落語などが庶民に広まりました。

その中で、古伊万里の器は以下のように人々の生活に根付いていきます：

• 茶の湯や懐石文化のなかで、色絵や染付の器が使われ、趣味人たちの間で「見立て」が楽しまれた。

• 贈答品や婚礼道具として、伊万里焼の大皿や蓋物が用意され、「格の高い器」として格式を示す道具でもありました。

• 料理屋（料亭）や旅館では、見栄えの良い古伊万里の器が多用され、目でも楽しむ食文化が形成されました。

とくに「色絵金襴手（いろえきんらんで）」のような華やかな器は、江戸の富裕な商人層に絶大な人気を誇りました。

6. 江戸〜東京の建築・屋敷と古伊万里

江戸の町には大名屋敷・旗本屋敷・商家がひしめき合っていました。これらの建物内では、以下のように古伊万里が用いられていました。

• **床の間に飾る飾皿（直径30〜50cmの大皿）**が人気で、美術品としての性格も強かった。

• 黒漆の飾り棚（違い棚など）に並べて見せる演出もありました。特に、呉須の発色が美しい染付皿や、人物図の絵付けの皿が好まれました。

• 屋敷の倉庫や納戸に保管された陶磁器の数は、持ち主の格式や財力の象徴ともされていたのです。

明治以降も旧家の蔵から発見された古伊万里の名品が東京の美術商に持ち込まれ、市場に出ることになります。

7. 東京美術界と古伊万里の評価

近代の東京では、美術史研究・コレクション活動の中心となる人物たちが古伊万里の美を評価してきました。

• 岡倉天心やフェノロサなど、日本美術の保護を唱えた文化人たちも陶磁器に着目。

• **五島慶太（五島美術館）や原三渓（三溪園）**などの実業家コレクターは、東京を拠点に古伊万里や有田焼の名品を蒐集。

• 昭和に入ると、骨董商や研究者によって「初期伊万里」「柿右衛門様式」「金襴手様式」などの分類も進み、東京のギャラリーや出版活動から全国へ広まりました。

8. 現代東京における古伊万里

現在の東京でも、古伊万里は様々な形で人々の生活・趣味・学びのなかに息づいています。

■ 購入・鑑賞スポット

• 日本橋・銀座・青山などには、伊万里焼・古陶磁専門の骨董商・美術商が集中。

• 青山の「根津美術館」や目黒の「五島美術館」、上野の「東京国立博物館」では、定期的に展示されることも。

• 高円寺や目白の骨董市やアンティークフェアでも、手頃な価格の古伊万里が出品され、若い世代にも人気です。

■ 現代の暮らしと古伊万里

• インテリアとして飾るほか、現代の和食器コーディネートに古伊万里を使う人も増加中。

• SNSやYouTubeでは、古伊万里を使ったテーブルセッティングや茶器紹介が人気コンテンツになっています。

• 東京のカフェや料理店で、古伊万里の器を用いる店も増加傾向。器の個性が食の演出に一役買っています。

最後に：古伊万里を通じて見える「東京の文化層」

古伊万里は、単なる焼き物ではなく、

「時代を超えて東京という都市の文化層を可視化する鏡」

とも言える存在です。江戸の暮らしに根差し、明治以降の市場を形作り、現代でも愛され続ける古伊万里。東京という都市が常に「美」を求め続けてきた歴史そのものが、古伊万里との関係に表れています。

東京都と九谷焼の関係性｜文化・美術・流通・現代の視点から

1. そもそも九谷焼とは？

• 起源：17世紀（大聖寺藩・九谷村）

• 石川県南部で誕生した色絵磁器。豪華絢爛な色使いが特徴で、「古九谷様式」「吉田屋」「庄三」「飯田屋」など様々なスタイルが生まれました。

• 特に明治期には「ジャパンクタニ」として輸出され、世界中で注目を浴びました。

2. 江戸・東京における九谷焼の受容（18〜19世紀）

■ 九谷焼は「加賀百万石の威光」として江戸で展開された

• 加賀藩（前田家）は江戸に大きな屋敷を構えており、九谷焼は藩の贈答用・装飾品として江戸の大名や豪商へ贈られることもありました。

• 色鮮やかで装飾性の高い九谷焼は、江戸の町人文化の中でも**「格調ある器」**として人気を集めました。

• 特に色絵金襴手や、古九谷様式のような重厚な色使いは、江戸の贅沢な好みにマッチしていたと言われています。

3. 明治以降：東京での「九谷焼の再評価と流通」

■ 明治〜大正期の「輸出産業」としての九谷焼と東京

• 明治政府は日本の輸出産業を強化する中で、九谷焼も「輸出陶磁器」として力を入れました。

• 東京では、九谷焼を扱う商社・骨董商が多数生まれ、上野や日本橋を中心に国内外に広める流通拠点となったのです。

• 特に**「輸出九谷（金襴手様式）」は東京での見本市でも展示され、西洋向けの意匠が評価されました。**

4. 昭和〜平成：東京美術界における九谷焼の研究と評価

■ 九谷焼を収蔵・展示する東京の美術館

• **東京国立近代美術館 工芸館（※現在は石川へ移転）**では、昭和期以降の九谷作家（徳田八十吉など）の作品を展示。

• 五島美術館・出光美術館などでも、古九谷や明治九谷の優品が所蔵されており、展覧会が開催されています。

• こうした活動を通じて、九谷焼は「民芸」ではなく「美術陶磁器」として東京で評価されるようになっていきました。

5. 現代の東京における九谷焼の展開

■ 九谷焼を扱う専門店・百貨店・ギャラリー

• 銀座や青山、日本橋の百貨店では、現代九谷の作家作品から古九谷まで幅広く扱われています。

• 例えば、以下のような形で展開されています：

  • 銀座の某百貨店：若手九谷作家の個展

  • 青山のギャラリー：現代九谷作家とのコラボ展

  • 六本木ミッドタウン：食器ブランドとのタイアップ

■ 九谷焼と現代のライフスタイル（東京の消費者像）

• 「和モダン」「和食文化の再評価」により、現代の東京では九谷焼が日常使いとしても人気。

• インテリア小物、豆皿、アクセサリー、ランプシェードなど、伝統と現代デザインの融合が進んでいます。

• 特に若手女性作家のカラフルな九谷焼は、東京のインスタ世代にも支持されています。

6. 東京で活躍した九谷焼ゆかりの作家たち

• 東京で作陶・発表を重ねた九谷焼の作家も多数います。

  • 例：三代徳田八十吉は、東京の美術界でも高く評価され、文化勲章を受章。

  • 浅蔵五十吉も東京藝術大学で教鞭をとり、後進の育成と九谷の技法の継承に尽力。

• 東京は単なる「販売の場」ではなく、九谷焼の「創作」「表現の場」としても機能してきたのです。

  
  

  
  

  東京都と九谷焼の関係性｜さらに深い層へ

  7. 東京で形成された「九谷焼コレクター文化」

  東京には、古くから九谷焼を愛し、コレクションする人々が多く存在していました。それは単なる収集趣味にとどまらず、美意識・文化の継承・地域工芸への支援という側面をもっていました。

  ● 文化人・実業家の蒐集と寄贈

  • 五島慶太（五島美術館）：鉄道王として知られる彼は、九谷焼を含む陶磁器・書画の蒐集家としても有名。彼のコレクションには優れた九谷が含まれています。

  • 出光佐三（出光興産創業者）：九谷焼の収集・研究を支援し、自身のコレクションを公開。出光美術館では特別展が定期的に開催されています。

  ● 文士・評論家との関わり

  • 白洲正子などの審美眼を持つ文化人は、九谷焼のもつ「絵画的」「装飾的」な魅力を高く評価し、随筆などでその美を紹介。東京の文化層に九谷焼の価値を定着させていきました。

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  8. 東京藝大と九谷焼の技術・芸術的交流

  東京藝術大学（上野）は、工芸分野でも日本屈指の教育・研究機関。九谷焼と東京藝大の間には、技術・表現の両面で長い交流があります。

  ● 教員・卒業生の活躍

  • 九谷の人間国宝・文化勲章受章者である徳田八十吉（三代）や浅蔵五十吉などが藝大と関わり、若い作家の技術・表現の育成に尽力。

  • 彼らの影響を受けた現代作家たちが東京で活躍し、九谷焼の表現領域を「前衛芸術」にまで広げていく動きも見られます。

  ● 表現の拡張：芸術としての九谷

  • 東京のアートシーンでは、九谷焼が現代美術と融合し、立体作品やインスタレーション作品として発表される例も増加中。

  • 例えば、九谷の技法で作られた「動物オブジェ」「装飾された空間作品」「大型パネルアート」などが、美術館やギャラリーで注目を集めています。

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  9. 九谷焼と東京の「デザインカルチャー」の交差

  ● 東京を舞台にした新たな展開

  • 近年では、九谷焼と東京のプロダクトデザイナー・建築家・ファッションブランドとのコラボレーションも盛んです。

    • 例）「nendo」や「イッセイミヤケ」などが九谷焼と組み、新しい生活美術を提案。

    • 例）蔦屋書店のアートコーナーや、無印良品・銀座店などで、九谷焼作家のミニ展示やトークイベントが開かれることも。

  ● 「東京でしか生まれない九谷」も存在

  • 東京在住の現代作家が、石川から素地や絵の具を取り寄せて、独自の九谷焼スタイルを創造する例もあります。

  • これにより、「伝統を継承するだけではなく、再構築する九谷」が、東京という都市からも誕生しているのです。

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  10. 東京で体験できる「九谷焼の空間」

  ● 美術館・ギャラリーの展覧会

  • 日本橋三越・松屋銀座・銀座和光などでは、毎年のように九谷焼の個展・フェアが開催。

  • 銀座や南青山の現代ギャラリーでは、若手作家の発表の場として九谷焼が紹介され、ジャンルを横断するアートとして扱われています。

  ● 九谷焼を使ったレストラン・カフェ

  • 例えば、代官山・青山・中目黒などには「器にこだわる和食店」が多く、九谷焼の器が料理の魅力を引き立てる演出の一部として使われています。

  • こうしたお店では、九谷焼の豆皿や鉢が日常のなかで自然に登場し、「暮らしのなかの工芸」としての役割を果たしています。

    
    

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