魯迅ろじん

時代 清・光緒7(1881)~民国25(1936年)
カテゴリー 中国美術
プロフィール 中国の文学者,思想家。本名,周樹人。字,予才。ほかに多くの筆名がある。少年の頃祖父の失脚で貧窮を体験。光緒 28 (1902) 年日本に留学,医学を志したが文学の重要性を痛感し,帰国後,1918年短編小説『狂人日記』で作家として出発,以後代表作『阿Q正伝』をはじめ,多くの小説,随筆,評論を発表,外国文学の翻訳,紹介にも努め,中国近代文学の祖となった。

魯迅(ろ じん / Lu Xun, 1881-1936)

魯迅(Lu Xun, 1881-1936)は、中国近代文学の父と称される作家・思想家・批評家であり、中国の社会改革や文学革命に大きな影響を与えた人物です。
彼の作品は、清朝末期から中華民国初期にかけての社会問題を鋭く批判し、中国の知識人に深い影響を与えました。
代表作には**『狂人日記』『阿Q正伝』『故郷』**などがあり、近代中国文学の礎を築いたとされています。

1. 生涯

◇ 幼少期と学問の修得(1881-1902)
1881年、中国浙江省紹興で生まれる。本名は「周樹人(しゅう じゅじん)」。
裕福な家庭に生まれたが、父親の死とともに家計が困窮し、苦しい少年時代を送る。
地元の私塾で古典文学を学び、優れた成績を収める。
日本への留学を決意し、1902年に日本へ渡る。
◇ 日本留学と思想の変化(1902-1909)
1902年、日本の仙台医学専門学校(現・東北大学医学部)に入学。
しかし、「医学では中国人の精神的な病を治せない」と感じ、文学と思想の研究に専念することを決意。
東京で文学や思想を学び、日本の進歩的な思想家や革命家と交流。
この時期に、西洋文学や日本の近代文学に触れ、後の作品に影響を与える。
1909年、中国に帰国する。
◇ 文学活動と社会批判(1910-1936)
帰国後、教師や編集者として活動しながら、文学を通じて社会改革を訴える。
1918年、『狂人日記』を発表し、中国近代文学の幕を開く。
1921年、『阿Q正伝』を発表し、封建社会の問題を痛烈に批判。
1920年代以降は文学活動だけでなく、社会運動にも関与し、反封建・反帝国主義の立場を明確にする。
1936年、肺病により上海で死去(享年55)。
2. 代表作品とテーマ

魯迅の作品は、封建制度の批判・人間の精神的な抑圧・社会改革をテーマにしたものが多い。

(1) 『狂人日記』(1918年)
中国初の白話(口語)小説であり、近代文学の先駆け。
封建社会の伝統を「人を食う文化」として批判。
狂人の視点から、中国の封建的な価値観の恐ろしさを浮き彫りにした作品。
(2) 『阿Q正伝』(1921年)
最も有名な作品で、中国社会の「精神勝利法」という概念を描く。
阿Qという人物が、敗北や屈辱を「自分の勝利」と思い込むことで、現実から逃避する姿を描く。
中国の知識人や庶民の弱さを風刺し、社会改革の必要性を訴えた。
(3) 『故郷』(1921年)
故郷に帰った主人公が、かつての友人との関係の変化を通じて、社会の変化と人間関係の儚さを描く。
郷愁と現実のギャップを鋭く表現した作品。
(4) 『野草』(1927年)
詩と散文を組み合わせた哲学的な作品。
社会の不条理や人間の内面的な苦悩を描いた。
3. 思想と社会運動

◇ 反封建主義と社会批判
中国の封建制度や儒教的価値観を厳しく批判。
「中国人の精神の奴隷状態」を解放するために、文学と思想の力を強調した。
◇ 進歩的な思想
マルクス主義に関心を持ち、左翼的な立場を支持。
しかし、完全な共産主義者ではなく、独立した批評家として活動。
◇ 教育と文化改革
日本の自由主義的な教育に影響を受け、中国の教育改革を主張。
古典的な漢文ではなく、白話(口語)での文学を推進し、民衆が理解しやすい言葉で社会問題を訴えた。
4. 魯迅の影響と評価

◇ 中国文学への影響
近代中国文学の創始者として、その影響は絶大。
後の中国作家(巴金、茅盾、老舎など)に多大な影響を与えた。
中国共産党も彼を「革命的文学者」として称賛し、その思想をプロパガンダに利用した。
◇ 日本文学への影響
日本の文学界や思想界にも影響を与え、多くの作品が日本語に翻訳された。
太宰治や中島敦など、日本の作家にも影響を及ぼした。
◇ 世界的な評価
「中国のツルゲーネフ」「東洋のゴーゴリ」とも称され、世界文学の中でも重要な作家として認識されている。
その作品は現在も広く読まれ、社会批判の視点を持つ現代文学にも影響を与えている。
5. 現在の市場価値と作品の収集

魯迅の初版本や直筆の原稿は、現在の中国美術・文献市場で非常に高値で取引されている。
特に、初版の『狂人日記』や『阿Q正伝』は、数百万元(数億円)規模で取引されることもある。
魯迅の直筆の手紙や草稿も、コレクターの間で非常に人気が高い。


6. まとめ

魯迅は、中国近代文学の先駆者であり、封建社会を批判し、民衆の精神的解放を目指した作家でした。
彼の作品は、現代の中国文学・思想・社会運動に大きな影響を与え、現在でもその価値が高く評価されている。
また、日本や世界の文学界にも影響を与え、その作品は現在も広く読まれ続けている。