郎世寧ろうせいねい

時代 1688~清・乾隆31(1766年)
カテゴリー 中国美術
プロフィール 中国,清前期のイタリア人の宮廷画家。イタリア名カスティリオーネ Giuseppe Castiglione。 1707年イエズス会に入り,当時すでに絵事にすぐれた。のち中国に渡り画家として清朝に奉仕することを決意し,ポルトガル経由で 15年7月 10日マカオ着,同年 (康煕 54) 11月2日北京に着き,康煕帝に拝謁した。

郎世寧(ろう せいねい / Lang Shining, 1688-1766)

郎世寧(Lang Shining, 1688-1766)は、清朝の宮廷画家として活躍したイタリア人宣教師・画家であり、中国絵画に西洋の写実技法を融合させた先駆者です。
本名は**ジュゼッペ・カスティリオーネ(Giuseppe Castiglione)**で、イタリア・ミラノ出身。
清朝宮廷に仕え、康熙帝・雍正帝・乾隆帝の3代にわたって宮廷画家として活動し、中国美術の革新に大きく貢献しました。

1. 生涯

◇ 幼少期と芸術の修行(1688-1714)
1688年、イタリア・ミラノで生まれる。
幼少期から画家としての才能を示し、ミラノのイエズス会修道院で美術を学ぶ。
バロックやルネサンスの影響を受けた写実的な油彩技法を習得。
◇ 宣教師として中国へ(1715)
1715年、27歳のときにイエズス会の宣教師として中国へ渡る。
当時の中国(清朝)は西洋文化を警戒していたが、宣教師たちは科学や技術、美術の分野で宮廷に仕えることで活動の機会を得た。
カスティリオーネもその才能を見込まれ、清朝宮廷に仕えることになった。
◇ 宮廷画家としての活動(1715-1766)
清朝宮廷で**「郎世寧(Lang Shining)」の中国名を与えられ、正式に宮廷画家となる。**
康熙帝の晩年に仕え、その後雍正帝・乾隆帝のもとで数多くの宮廷絵画を制作。
西洋の透視図法(遠近法)や陰影表現を中国画に取り入れ、新しい様式を確立。
乾隆帝の時代には、宮廷画の中心的な存在となり、多くの作品を残した。
◇ 晩年と死去(1766)
1766年、北京で死去(享年78歳)。
死後も彼の作品は清朝宮廷で高く評価され、その影響は後の中国絵画に大きな影響を与えた。
2. 画風と技法

郎世寧の画風は、中国の伝統的な宮廷画に、西洋の写実的な技法を融合させた独自の様式が特徴です。

(1) 西洋の遠近法と陰影技法
西洋のルネサンス絵画の影響を受け、正確な遠近法(パースペクティブ)を取り入れた。
陰影を活用することで、より立体的な表現を実現。
中国の伝統的な絵画では見られなかった、リアルな表現を導入。
(2) 中国の宮廷画の要素
彼の作品は、西洋の技法を取り入れながらも、中国宮廷画の伝統的な要素(鮮やかな色彩、細密な描写)を維持。
例えば、中国の花鳥画の精密な描写に、西洋の光と影の技法を加えた。
(3) 動物画と肖像画の革新
特に馬や犬、鳥などの動物画では、西洋の写実的な表現が活かされ、毛並みや質感のリアルな表現が際立つ。
皇帝や高官の肖像画では、従来の宮廷肖像画よりも立体感のあるリアルな人物表現が特徴的。
3. 代表作品

(1)《乾隆帝御馬図》
乾隆帝が愛馬とともに描かれた作品。
馬の筋肉や毛並みが非常にリアルに描かれており、西洋画の影響が強く見られる。
(2)《百駿図》
西洋の油絵技法を取り入れた馬の連作。
馬の動きや質感が非常にリアルで、清朝の宮廷画の中でも特に重要な作品とされる。
(3)《弘治帝肖像画》
皇帝の肖像画で、伝統的な宮廷肖像画と西洋の写実技法が融合している。
陰影表現により、皇帝の顔がより立体的に見える。
4. 郎世寧の影響と評価

◇ 清朝美術界への影響
郎世寧の画風は、清朝宮廷画の伝統を一新し、西洋の技法を融合させた新しい様式を確立。
彼の影響を受けた宮廷画家たちによって、清朝後期の宮廷画における西洋的表現が広まった。
乾隆帝のもとで、西洋美術が宮廷内で奨励されるきっかけとなった。
◇ 近代美術への影響
彼の作品は、中国近代美術にも影響を与え、西洋画と中国画の融合を試みた後世の画家たちに影響を与えた。
20世紀の中国画家たちは、彼の技法を再評価し、現代的な表現に応用している。
◇ 現在の市場価値
郎世寧の作品は、現在の美術市場で極めて高く評価されている。
彼の作品は、サザビーズやクリスティーズのオークションで数億円規模で取引されることもある。
特に「百駿図」や「乾隆帝御馬図」は、コレクターの間で高い人気を誇る。
贋作も多いため、真贋の鑑定が極めて重要。

5. まとめ

郎世寧(ジュゼッペ・カスティリオーネ)は、西洋画の写実技法を取り入れ、中国宮廷画に革新をもたらした清朝の宮廷画家でした。
彼の作品は、西洋の遠近法や陰影表現と、中国伝統の細密な筆致や色彩を融合させた独自の画風が特徴です。
特に、動物画や肖像画の分野で革新的な表現を生み出し、清朝宮廷美術の発展に大きな影響を与えました。
現在でも、彼の作品は美術市場で高く評価され、多くのコレクターや美術館に収蔵されています。