潘天寿はんてんじゅ

時代 清・光緒23(1897)~中華人民共和国・1971年
カテゴリー 中国美術
プロフィール 近代中国の書画家。浙江省寧海の人。7歳で村の塾に入ったが、暇を見つけては小説の挿絵を模写していたという。高等小学校に入学して間もなく、『芥子園画伝』と顔真卿の法帖を買って臨模に取り組んだという。師範学校卒業後は小学校教師を経て、上海美術専科学校国画科の教授に着任。ここで中村不折・小鹿青雲共著の『支那絵画史』を元に講義をしながら『中国絵画史』を著し、1926年に刊行した。ほか上海では呉昌碩・黄賓虹・劉海粟を始め多くの画家と交遊した。戦後は中国美術家協会副主席を務めるなど、新中国の美術画壇に大きな影響を及ぼした。画風は徐渭・八大山人・石涛らの影響を受けており、写意花鳥及び山水を得意としていた。また書にも優れていたことで知られる。

潘天寿(はん てんじゅ / Pan Tianshou, 1897-1971)

潘天寿(Pan Tianshou, 1897-1971)は、20世紀中国の著名な画家・芸術教育者であり、伝統的な文人画の精神を受け継ぎながらも、独自の革新的な表現を確立した人物です。
彼の作品は、力強い筆致と独特の構図、象徴的なモチーフが特徴で、中国近現代美術の発展に大きな影響を与えました。

また、潘天寿は芸術教育にも尽力し、中国美術学院(浙江美術学院)の院長を務め、多くの後進を育成しました。

1. 生涯

◇ 幼少期と学問の修得(1897-1915)
1897年、中国浙江省寧海県で生まれる。
幼いころから書画に興味を持ち、特に伝統的な文人画や書道を熱心に学んだ。
10代の頃から詩や書画に優れた才能を発揮し、南宋・元・明・清の伝統を徹底的に研究。
◇ 本格的な芸術修行(1915-1923)
1915年、浙江省立第一師範学校に入学し、美術教育を受ける。
ここで、中国画の巨匠である**黄賓虹(こう ひんこう)や呉昌碩(ご しょうせき)**などの影響を受ける。
特に呉昌碩の「篆書的な筆法」を学び、独自の力強い筆遣いを確立するきっかけとなる。
◇ 芸術教育者としての道(1923-1949)
1923年より、中国各地で美術教育に従事し、中国画の伝統を次世代に伝えることに尽力。
1928年、杭州芸術専門学校(現・中国美術学院)に教授として迎えられる。
1945年には、浙江美術学院の副院長に就任し、中国美術界のリーダー的存在となる。
◇ 文化大革命と弾圧(1966-1971)
1966年、文化大革命が勃発し、伝統文化や文人画が批判の対象となる。
潘天寿も例外ではなく、「封建主義の残滓」として迫害を受ける。
1971年、過酷な扱いを受けた末、杭州で亡くなる(享年74)。
彼の死後、中国政府は彼の名誉を回復し、再評価が進んだ。

2. 画風と技法

潘天寿の画風は、伝統的な中国画を基盤にしながらも、強烈な個性と革新性を持つ。

(1) 力強い筆致と篆書的な筆法
彼の筆法は、篆書(古代中国の書体)の特徴を取り入れた力強い線が特徴的。
特に、鋭くて力強い筆使いで、ダイナミックな構成を生み出す。
(2) 独特な構図
潘天寿の作品には、大胆で独創的な構図が多い。
画面の上部に余白を作り、主題を下部に配置する構成など、従来の中国画とは異なる空間表現を確立。
(3) 象徴的なモチーフ
岩・鷹・蓮・竹・花鳥などが頻繁に登場。
特に、「鷹」は力強さと精神的な気高さを象徴し、彼の画風を象徴する重要なモチーフ。
岩や竹は、彼の精神性と剛直な性格を反映している。
(4) 伝統と革新の融合
彼の作品は、伝統的な水墨画の技法を基盤にしながらも、現代的なダイナミズムを持つ。
西洋美術の遠近法や光の表現を取り入れつつ、中国画の精神を失わない独自のスタイルを確立した。
3. 代表作品

(1)《雄視図》(鷹の図)
険しい岩の上にたたずむ鷹を描いた作品。
鋭い眼光の鷹が、気高く堂々とした姿を見せる。
彼の強烈な筆致と力強い構成がよく表れている。
(2)《梅竹図》
梅と竹を題材にした水墨画で、伝統的な文人画の要素を多く含む。
梅は「気高い精神」、竹は「しなやかで強い意志」を象徴する。
(3)《江天高秋》
巨大な岩を画面の下部に配置し、空間の広がりを表現した作品。
岩と水のコントラストが美しく、詩的な雰囲気を醸し出している。
4. 潘天寿の影響と評価

◇ 美術界への影響
中国美術学院(浙江美術学院)の発展に大きく貢献し、多くの後進を育てた。
伝統的な文人画に新しい技法と表現を加え、近代中国画の革新をリード。
彼の画風は、20世紀後半の中国画家に大きな影響を与え、現在の中国水墨画にもその精神が受け継がれている。
◇ 現在の市場価値
潘天寿の作品は、中国のオークション市場で非常に高値で取引される。
2018年、彼の作品**《江天高秋》が約2.7億元(約50億円)で落札されるなど、近年価値が急上昇**。
彼の作品は、特に中国国内外のコレクターや美術館で非常に高く評価されている。
贋作も多く出回っているため、真贋鑑定が重要。


まとめ

潘天寿は、20世紀中国美術の巨匠であり、伝統的な文人画の精神を継承しながらも、力強い筆致と革新的な構図を取り入れた画家でした。
彼の作品は、鷹・竹・岩などの象徴的なモチーフを用い、独自の空間構成とダイナミックな筆使いで表現されている。
現在でも、中国美術市場で非常に高い価値を持ち、多くのコレクターに人気のある作品となっています。