黄賓虹こうひんこう
時代 | 清・同治3(1865)~中華人民共和国・1955 |
---|---|
カテゴリー | 中国美術 |
プロフィール | 黄 賓虹(こう ひんこう)は、中国の近代山水画家である。名は質、字を樸存・樸人、号に予向・虹廬・虹叟、中年以降は賓虹と称した。祖籍安徽省歙県潭渡村。 黄賓虹(こう ひんこう / ホアン・ビンホン, 1865年–1955年)とは? 黄賓虹は、中国近代の最も影響力のある水墨画家、書家、美術理論家の一人であり、**「近代中国山水画の巨匠」**と称されています。伝統的な山水画の技法を深めるとともに、新たな表現を生み出し、特に「黒の美学」を追求したことで知られています。 黄賓虹の生涯と経歴 本名:黄懋質(こう ぼうしつ / ホアン・マオジー) 生年:1865年 没年:1955年 出身地:中国安徽省徽州(現在の黄山市) 職歴: 書画家・美術評論家として活躍 **北京大学・浙江美術学院(現・中国美術学院)**などで美術教育に従事 古画の収集・研究を行い、美術理論の発展にも貢献 彼は生涯にわたり、伝統的な山水画を革新し、筆致や墨の濃淡を極めた表現を確立しました。また、美術評論家としても活躍し、中国絵画の発展に大きな影響を与えました。 黄賓虹の芸術的特徴 1. 「五筆七墨」の技法 黄賓虹は、山水画において「五筆法」と「七墨法」を重視しました。 五筆法:伝統的な筆法の分類で、皴(しわ)、点、擦(こする)、染(しみこませる)、画(描く)の五つの技法を指す。 七墨法:墨の濃淡を七段階に分け、立体感や深みを生み出す技法。 これらの技法を駆使し、彼の作品には重厚で奥深い雰囲気が漂っています。 2. 「黒の美学」 黄賓虹の作品は、「黒」が特徴的です。彼は**「墨は五彩を含む」**とし、単なる濃淡の変化ではなく、黒の中に多様な色彩や深みを表現しました。特に晩年の作品には、黒々とした筆致で構成された山水画が多く見られます。 これは、それまでの明清時代の伝統的な山水画(繊細な筆致や軽やかな描線が多かった)とは異なり、より力強く独創的な表現となりました。 3. 点描(「積点法」)による独自表現 黄賓虹は、晩年に「積点法」という技法を発展させました。これは、細かい点を重ねることで画面に質感や奥行きを生み出す方法です。 この技法により、彼の山水画は深い層を持ち、墨の濃淡が繊細に表現され、まるで霧に包まれた山岳風景のような幻想的な雰囲気を醸し出しています。 代表作品 《黄山図》 - 彼の故郷である安徽省黄山を描いた代表作。力強い筆致と深みのある墨の表現が特徴。 《富春山居図臨本》 - 伝統的な中国山水画の名作「富春山居図」を模写し、独自の解釈を加えた作品。 《青城山図》 - 四川省青城山の壮大な風景を描いた作品で、点描法の技術が際立つ。 黄賓虹の影響 黄賓虹の画風は、伝統的な山水画の継承者であるだけでなく、現代の中国美術にも大きな影響を与えました。彼の作品は、特に**「墨の濃淡の極限までの探求」**において、のちの中国画家たちに大きな刺激を与えました。 また、美術教育にも力を入れ、多くの弟子を育成しました。その影響は、現在の中国美術学院(浙江省)などにも引き継がれています。 市場価値とオークション 黄賓虹の作品は、近年の中国美術市場で非常に高値で取引されています。 例えば: 2011年に香港のサザビーズで《黄山図》が約4億円で落札 2017年に北京で《山水四屏》が約5億円で落札 特に、彼の晩年の作品(1940年代以降)は、市場での評価が非常に高くなっています。 黄賓虹と日本 黄賓虹の作品は、日本の美術界にも影響を与えており、日本の収集家にも人気があります。彼の技法は、日本の水墨画や書道の分野でも参考にされることが多いです。 まとめ 黄賓虹は、伝統的な中国山水画を継承しながらも、「黒の美学」や「積点法」によって独自の表現を確立した近代中国山水画の巨匠です。彼の作品は、現在も高い評価を受け、オークション市場では数億円の価格で取引されています。 |