溪斎英泉けいさいえいせん

時代 江戸時代
カテゴリー 掛け軸,絵画、書画
作品種別 浮世絵
プロフィール 渓斎 英泉(けいさい えいせん、寛政2年(1790年)- 嘉永元年7月22日(1848年8月20日))とは、江戸時代後期に活躍した日本の浮世絵師。

渓斎英泉(けいさい えいせん)とは

渓斎英泉(約1790年 – 1848年)は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師・黄表紙作者です。
とりわけ美人画と艶本(えんぽん、春画)の分野で知られ、
また一部では風景画も手がけました。

英泉は、喜多川歌麿や鳥文斎栄之の影響を受けながらも、
独特の色気と生々しい感覚をもった美人表現で、他の浮世絵師とは一線を画しました。

生涯と背景

本名:菊川重信(きくかわ しげのぶ)
生年:寛政年間(推定1790年頃)
没年:嘉永元年(1848年)
出身:江戸(現在の東京都)
職業:もとは貸本屋の主人(菊川屋)
師匠:葛飾北斎、あるいは北尾重政系統とする説も
別号:渓斎、英泉、春潮斎、菊川英泉、英泉斎 など多数
若い頃は貸本屋を経営しながら黄表紙(絵入りの滑稽な読み物)も書いていましたが、のちに絵師業に専念します。
町人層に向けた絵を描き、特に庶民的で粋な浮世絵師として高く支持されました。

作風と特徴

1. 美人画
特に遊女や町娘を描いた美人画で高く評価されています。
色香漂う妖艶な女性像が特徴。
歌麿の上品な美人画とは異なり、英泉の女性はより肉感的で、生活感を感じさせます。
着物の柄や髪型も非常に細かく描写し、当時の風俗資料としても貴重です。
2. 春画(艶本)
艶本(春画)の分野でも多くの作品を残しました。
英泉の春画は、官能的で、しばしば庶民の日常感覚を取り入れた親しみやすい作風です。
3. 風景画
晩年には風景画にも取り組みました。
とくに代表作の「木曾街道六十九次」(渓斎英泉→歌川広重と続くシリーズの前半)では、
叙情的な旅情表現を見せています。
4. 鮮やかな色彩と繊細な描写
顔や肌の柔らかさを繊細なぼかし技法で表現。
着物のデザインも当時流行の文様を取り入れており、細部まで洒落ています。
主な代表作

「今様美人合」シリーズ
季節や行事ごとに美人を描いた連作。
「青楼美人合姿鏡」シリーズ
遊郭の高級遊女たちの肖像集。
「木曾街道六十九次」前半部分
歌川広重と並んで知られる、旅の情緒を描いた風景画シリーズ。
春画集「艶本十二ヶ月」
英泉ならではの、親密な視点の春画作品。
これらは、現在東京国立博物館、太田記念美術館、ボストン美術館などに所蔵されています。

英泉の評価


項目 内容
美人画 歌麿の流れを受けつつ、より生々しく肉感的な女性美を追求
春画 庶民感覚に根ざした親密な艶本制作
風景画 叙情的で湿度を感じさせる独特の旅情描写
色彩と描線 鮮やかな色遣い、柔らかい線の美しさ
同時代の歌川国貞(=三代豊国)が華やかな浮世絵を描いたのに対して、
英泉はよりリアルでしっとりとした美人画世界を確立しました。
近年、再評価が進み、英泉の肉筆画や艶本に注目する展覧会も増えています。
渓斎英泉とは?

「生活感と色気を兼ね備えた江戸後期の庶民派浮世絵師」
「江戸の空気を纏った妖艶な美人たちを描いた名手」

それが、渓斎英泉です。